オーストラリアと日本の高齢者ケア制度を徹底比較:違いと特徴

オーストラリアと日本の高齢者ケア制度を徹底比較:違いと特徴

皆さん、こんにちは!

今回は、「オーストラリアには介護保険制度がないって聞いたけど、本当?」という、よくいただくご質問にお答えしていきたいと思います。

結論から言うと、オーストラリアには日本のような「介護保険制度」という独立した制度はありません。しかし、だからといって介護サービスがないわけではありません。オーストラリアでも、公的な介護制度を通じて、介護やリハビリなど必要なサービスが提供されています。

日本の介護保険制度とは異なる点も多いので、オーストラリアにお住まいで将来の介護について考えている方や、海外の介護制度に興味がある方にとって、きっと役立つ情報になるはずです。

それでは、詳しく見ていきましょう!

2025年7月に在宅の介護制度内容の改定版が施行される予定なので、その前に、まずはどんな流れかをざっくり学ぼう!

以下の内容は、日本の厚生労働省が提供する日本の要介護認定の仕組みと手順と、オーストラリア作業療法協会の情報(15/05/2025に更新)とを参考にしています。

日本の「介護保険制度」とは

日本は「介護保険料」として40歳以上の国民が毎月納める

日本の公的な介護制度は「介護保険制度」といって、40歳以上の国民が毎月介護保険料を納めることで財源が賄われています。保険料は年度や収入によって変化します。また、支払い方法もそれぞれで、会社員の場合は給料から天引きされます。

高齢化が進むと保険料負担が増えるというのはこのことだね。

日本の介護保険サービス対象者

介護保険制度のサービスを受けられるのは、主に65歳以上で要介護認定を受けた方です。また、40歳以上で「16種類の特定疾病」に該当し、要支援・要介護認定を受けているかたもサービス対象者となります。

オーストラリアに介護「保険」制度はない!?財源はどこから

公的な介護制度の財源

オーストラリアには日本でいう介護保険制度という別枠の仕組みはありませんが、介護制度やそれに伴う介護・リハビリなどサービスはあります。

日本のような「保険料負担」ではなく、国の一般財源(税)から公的な介護サービスの費用が賄われます。オーストラリアの所得税率について知りたい場合はこちら⇒海外移住を考えるなら知っておきたい!日本とオーストラリアの税金の違い【2025年最新版】

サービスを利用するにあたっては、日本は収入や資産により「1~3割自己負担」ですが、オーストラリアの場合は介護・リハビリなどのサービス内容やそれを受ける際、所得が一定額を超える利用者の場合に事業者から追加の費用が求められる場合がある以外は、基本的に全額カバーされます。事業者が利用者に請求することができる追加費用については、国が上限を定めています。

高齢者介護・リハビリサービスの対象者

オーストラリアで高齢者介護・リハビリサービスを受けられる方は、日本と同様に主に65歳以上となり、65歳以下の方で日常的な介護を必要とされるかたは国民障害者保険(NDIS)の対象となります(こちらも一般税を財源とする)。

日本の要介護認定の仕組みと手順

日本の厚生労働省が提供する日本の要介護認定の仕組みと手順によると、日本で要支援・要介護と認定されてサービスを受けるまでの流れは以下の通りです。

1.要介護認定は、まず、市町村の認定調査員による心身の状況調査(認定調査)及び主治医意見書に基づくコンピュータ判定を行う。(一次判定)
2. 次に保健・医療・福祉の学識経験者により構成される介護認定審査会により、一次判定結果、主治医意見書等に基づき審査判定を行う。(二次判定)
3. この結果に基づき、市町村が申請者についての要介護認定を行う。

日本では、65歳以上が対象となり、「介護保険制度」の下、保険料を納めることで受けられる制度です。一方、オーストラリアの介護制度は保険ではなく「税財源」から賄われる

日本の要支援・介護認定の仕組みと手順:My Aged Care(マイ・エイジド・ケア)って何?

オーストラリアには、2013年7月1日に導入された「My Aged Care(マイ・エイジド・ケア)」という政府が定める高齢者介護サービスへの主要な窓口となる制度があります。

My Aged Careは、主に以下の2つの要素で構成されています。

  • My Aged Care ウェブサイト: 介護サービスに関する情報が豊富に掲載されています。
  • My Aged Care コンタクトセンター (1800 200 422): 電話で直接相談できる窓口です。

このシステムは、高齢者介護サービスを必要とする本人、その家族、介護者だけでなく、サービス提供者や医療従事者にも情報を提供しています。

2015年7月には、My Aged Careに大きな変更が加えられました。特に重要なのが、中央クライアント記録の導入です。これにより、利用者の情報が中央で一元管理され、利用者、アセスメント担当者、サービス提供者の間で情報が共有できるようになりました。同じ情報を何度も伝えなくても良くなったので、利用者にとって大きなメリットです。

日本では介護保険制度を使いたい人の窓口は「市区町村」役場だけど、オーストラリアでは国家政府の下で一括管理されているよ。

その他にも、以下のような改善が行われました。

  • My Aged Care 地域アセスメントサービス (RAS) の導入: 初めて介護支援制度を利用する方( Commonwealth Home Support Programme (CHSP) を利用する方)に対して、対面でのアセスメントを実施するようになりました。
  • National Screening and Assessment Form (NSAF) の利用: コンタクトセンターのスタッフやアセスメント担当者が共通の書式(NSAF)を使用するようになりました。
  • ウェブベースのMy Aged Care ポータル: 利用者、アセスメント担当者、サービス提供者それぞれが、専用のウェブポータルを通じて情報にアクセスできるようになりました。

高齢者介護サービスを初めて利用したい場合は、まずMy Aged Careのコンタクトセンターに電話するのがよいかもしれません。電話でご本人または後見人の許可を得て、個人情報やアセスメント、受けたいサービスなどに関する情報が記録される「パーソナライズされたクライアント記録」が作成されます。この記録は、すでに提供された情報を繰り返す必要がないように、共有の許可を求められます。コンタクトセンターのスタッフが、申請者にとってどのアセスメントサービスが適切かも助言してくれます。

英語が使えない方は電話で「Translator(通訳)」を無料で依頼することも出来る。英語圏以外の民族・文化圏出身の方へのサポートも考えられているところが、多民族国家の特徴だね。

介護制度内での介護やリハビリは認可された事業所が提供

どの介護制度、その中の介護度レベルにより、認定されたご本人が受けられるサービスや年間予算が変わってきます。作業療法士・理学療法士などの専門家や介護士などのサポートは、政府の認可を受けた事業所のサービスを使うことができます。

My Aged Care で受けられるサービスの種類

My Aged Care を通じて、様々な高齢者介護サービスを受けることができます。主なプログラムは以下の通りです。

1. Commonwealth Home Support Programme (CHSP)

CHSPは、自宅で自立した生活を送るために、日常のタスクに少し手助けが必要な高齢者向けのプログラムです。2015年7月1日に開始されました。

日本でいう、「要支援」レベルのサポートが必要な高齢者向けのプログラムだね。

利用資格: 65歳以上の方(原住民のアボリジニやトレス海峡諸島民の方は50歳以上)。My Aged Careへの登録とRASによるアセスメントが必要です。

CHSPで利用できるサービス例:

  • 地域および在宅支援サービス: 家事援助(掃除、洗濯など)、パーソナルケア(シャワーや着替えの介助など)、住宅のメンテナンス、看護、交通支援
  • 食事サービス: 食事の準備や自宅への配達
  • リハビリ: 作業療法、理学療法、言語療法など
  • 介護者向けサービス: レスパイトケア(短期入所)やカウンセリング

2. Home Care Packages (HCPs)

HCPsは、より複雑なケアニーズがあり、自宅で生活を続けたい方向けのサービスです。個々のケアニーズに合わせて、オーダーメイドの支援パッケージが提供されます。CHSPと施設入居型介護の中間に位置するプログラムです。

日本でいう、在宅で「要介護」レベルの方向けのプログラムだね。

2025年11月からはSupport at Home「サポート・アット・ホーム」プログラムという名前で、内容も改定される予定だよ(詳細はオーストラリア政府の公式ホームページ)

ホームケアパッケージの要介護レベルは1(軽度介護)~4(重度介護):

利用資格: 最低年齢制限はありません。Aged Care Assessment Team (ACAT) によるアセスメントを受けて、どのサービスが利用できるか判断されます。

65歳以下の方で日常生活に継続的なサポートが必要な障害がある方は、国民障害者保険制度(NDIS)を利用することが一般的。

ホームケアパッケージで利用できるサービス例:

  • サポートワーカー(介護士やヘルパー)が行うパーソナルケア(シャワー、着替えの介助など)
  • 排泄介助・管理
  • 移動や器用さを高めるための補助具や設備(松葉杖、歩行器、ベッドレールなど)
  • 交通および個人支援
  • 看護およびリハビリ(作業療法、理学療法、言語療法など)

サービス事業者・所を選択すると、「ホームケア契約」が提供され、パッケージに含まれる内容の詳細が記載されます。サービスプロバイダーは利用者と協力して目標を特定し、ケアプランを作成します。ケアプランは少なくとも12か月に1回見直される必要があり、利用者の同意なしに変更することはできません。また、利用者はニーズが変化した場合、いつでもケアプランの見直しを要求する権利があります。

適切なサービス事業者・所を探したり、契約や予算管理、ケアプラン作成をするのが難しいご本人や家族のために、HCPコーディネーター(日本でいうケアマネージャー)のサポートを受ける場合が多いです。

3. Residential Care(施設入居型介護)

在宅で生活することが難しくなり、施設入所を考える方には、ACATチームが、高齢者介護施設への入居が適切な選択肢であるかどうかを評価します。アセスメント担当者は、利用者の地域にある高齢者介護施設の情報や、短期間の滞在が必要な方向けのレスパイトケア(短期入所)についても情報提供します。

4. Flexible Care(フレキシブルケア)

「フレキシブルケア」には、様々な一時利用プログラムが含まれます。主なものとして、Transition Care Programme (TCP) と Short-Term Restorative Care Programme (STRC) があります。

  • Transition Care Programme (TCP): 入院していた高齢者で、医療行為は必要なくなったけど、在宅復帰は本人の能力的・住環境的にまだ難しい方が対象となります。入院中にACATによるアセスメントを受ける必要があります。最長12週間利用可能ですが、個々の状況によっては延長も可能です。日本でいう老人保健施設に近いです。
  • Short-Term Restorative Care Programme (STRC): ホームケアパッケージなどを受けていない在宅の高齢者向けに、最長56日間のリハビリにより実用機能の改善または遅らせることで、高齢者が自宅で自立した生活を送るのを支援します。※STRCもホームケアパッケージと共に、2025年11月からはSupport at Home「サポート・アット・ホーム」プログラムという名前で、改定される予定です(詳細はオーストラリア政府の公式ホームページ)

病院からの退院が比較的スピーディーなオーストラリアでは、高齢者の骨折後のリハビリでの集中的なリハビリや、家屋調整中の待機時、施設探し中の待機時にこういったプログラムを利用することも多い。

施設内ではなく、自宅またはそれに近い形でのリハビリの機会を早期に促すことで、自宅での身体・道具・場所の安全な使い方を再学習するなど、実用機能を再獲得しやすいこともあるかもしれないね。

高齢者介護サービスのアセスメントはどのように行われるの?

My Aged Careへの最初の連絡で、高齢者介護サービスに関する情報が提供され、希望に応じて初期スクリーニングプロセスが開始されます。

National Screening and Assessment Form (NSAF) が使用され、RAS (CHSPサービス) またはACAT (ホームケアパッケージ) による対面アセスメントが必要かどうかを判断します。My Aged Careのスクリーニングで、サービスプロバイダーへの直接紹介が最初に必要となる場合もあります。

地域アセスメントサービス(RAS)

より軽度・初期の高齢者介護のための在宅支援アセスメントは、My Aged Care 地域アセスメントサービス(Regional Assessment Service:RAS)の担当者によって実施されます。在宅支援アセスメントの結果として、上記のCHSPサービスへの紹介が含まれる場合があります。

RASの地域担当者が、利用者の自宅で面談の時間を設定します。現在どのような支援を受けているか、健康上の問題があるか、自宅での活動をどの程度こなせるかなどの質問をします(こちらも無料で通訳サービスを依頼可能)。アセスメント担当者は、利用者の高齢者介護ニーズを反映した支援計画を立てるために利用者と協力します。

高齢者ケア評価チーム(ACATs)

Aged Care Assessment Teams (ACATs、ビクトリア州ではACAS)は、より複雑なケアニーズがあり、在宅介護サービスへのアクセスを希望する方や、高齢者介護施設への入居を検討している方を対象に、包括的なアセスメントを実施します。

ACATは、医師やその他の医療従事者で構成されたチームで、高齢者の身体的、心理的、医学的、回復期、文化的、社会的なニーズを評価します。

ホームケアパッケージ、施設介護、退院後のトランジションケア(日本でいう老人保健施設)、STRC(短期回復期ケア)、または高齢者介護施設でのレスパイトケア(短期入所)を利用したい場合は、ACATのアセスメントが必要です。

ACATのアセスメントは、My Aged Careコンタクトセンターに電話することで依頼できます。または、医師、ソーシャルワーカー、その他の医療専門家が手配することも可能です。家族や介護者もACATアセスメントの依頼を行うことができます。

ACATのアセスメント担当者は、自宅または病院で利用者と面談し、高齢者介護サービスに関する選択肢について話し合います。RASのアセスメントと同様に、どのような活動で支援が必要か、どのような健康状態であるかなどを尋ね、地域で利用できるサービスに関する情報を提供します。

その後、利用者はアセスメントの結果を通知する手紙を受け取ります。この手紙には、利用者が選択したサービスプロバイダーが情報にアクセスするために使用する紹介コードが含まれています。

このコード(Referral Code)を共有することで、情報共有や各事業者への支払いをスムーズに行うことが出来る

いかがでしたでしょうか? オーストラリアの高齢者介護制度「My Aged Care」は、高齢者が住み慣れた場所で安心して生活を続けられるよう、多様なプログラムを提供していることがお分かりいただけたかと思います。

参考になれば幸いです!

最後までお読みいただきありがとうございました!