【日豪OTが教える】オーストラリアの作業療法士の仕事とは:どんな働き方?日本との違いとは?

【日豪OTが教える】オーストラリアの作業療法士の仕事とは:どんな働き方?日本との違いとは?

海外、特にオーストラリアで作業療法士として働いてみたい!

という人や、

オーストラリアと日本の作業療法士の働き方の同じところや違うところがどこなのか知りたい。

という人が最近増えているようです。

一方で、それを知ろうにも、海外といえばアメリカやカナダの作業療法士についての資格の取り方や働き方くらいしか情報があまりなく、オーストラリアについてはまだまだ知られていないのが現状です。

本記事では、実際に日本とオーストラリアで作業療法士として働いた経験のある私が、オーストラリアの作業療法士が働く領域や日本との違いについて、具体的な体験談を交えて説明します!

少しでも興味を持っていただけると幸いです!

作業療法士はどんな職場で働いているの?

オーストラリアの作業療法士は日本の作業療法士と同じく、専門知識や経験と、対象者本人やその周りの人々から集めた情報やリソースを使って、本人や家族が生きがいのある生活を再度送れる、送り続けられるようにする専門家、Enabler(可能化する人)です。

作業療法士が働く領域は、対象者一人ひとりによって必要とされる介入方法が異なるため多岐に渡ります。しかし、作業療法士が働く場所は一般的に、下記の4か所のどこかです。

  • 医療現場(病院、クリニック、リハビリ施設など)
  • 教育現場(学校、保育園、特別支援学校など)
  • 地域サービス (訪問リハ、地域の健康センター、介護施設、住宅環境アドバイス、テレヘルスなど)
  • 職場(企業や公共機関など)

一般的な転職サイトなど求人情報には、上記のどれかが記載されています!

作業療法の対象者と具体的な仕事内容とは?

神経・運動系の障がいと共に生きる方のリハビリ

神経・運動系の障害を抱えた方が作業療法の対象に挙げられます。例えば、脳卒中、脊髄損傷、パーキンソン病、骨折(特に手)などがあります。

これらの障害によって、手足の麻痺や筋力低下、バランスの悪化など、身体機能が低下してしまうため、日常生活での動作や活動に支障が生じます。

作業療法士は、こうした障害を持つ患者のリハビリテーションにおいて、病院、クリニック、リハビリ施設などで、日常生活で必要な動作を対象者が再学習できるようアシストします。

日本と同様に、理学療法士や言語聴覚士、技師さんやセラピーアシスタントの方たちと連携してリハビリを行います。日本の作業療法士よりも、評価に時間を使い、慣れてきた後の介入はセラピーアシスタントに引き継いで、必要な時に再評価や介入変更をしていくイメージです。

小児の発達障害と共に生きる子供とその家族、先生の支援

次に、小児の発達障害を抱えた子供とその家族や先生の支援が挙げられます。

例えば、自閉症スペクトラム障害、発達遅滞、脳性麻痺、学習障害などを抱えて生きる方が当てはまります

作業療法士は、子どもたちの成長に合わせて、機能的・社会的なスキルがつくように、または周囲の人々の理解を促すようサポートします。例えば、子どもたちが日常生活動作(ADL)を行う上で必要なスキル、手先の器用さや筆記能力などの発達を促すためのトレーニングや訓練を行います。また、子どもたちが学校での課題に取り組むためのスキルを獲得するための支援も行います。

小児領域での作業療法士は、子どもたちの日常生活や学校での問題を把握し、家庭や学校での環境の改善やアドバイス、自立支援などを行う専門職ともいえるでしょう。

高齢者の日常生活や生きがい活動の支援

高齢者も作業療法の対象となります。高齢者の場合、判断力や視力・聴力・筋力低下、関節痛など、身体的・精神的な機能の低下が見られることがあります。

作業療法士は、高齢者の身体機能や認知機能を評価し、維持・向上のための計画立案、本人の意思決定をサポートし家族理解を促したり、ご本人が生きがいのある生活を引き続き送れるように支援します。

また、高齢者が安全に暮らせるための環境設定も、作業療法士の重要な役割のひとつです。高齢者が住む施設や自宅の環境を改善し、高齢者が日常生活を送りやすい環境を整えます。例えば、バリアフリー化や家庭内での安全対策などが挙げられます。

また、高齢者が自分自身で行うことができない場合、作業療法士は介護士や家族に介助指導を行い、高齢者が可能な限り自立した豊かな生活を送るための具体的な目標設定や達成のための方法を提案します

オーストラリアの作業療法士は、セラピーアシスタントに介入指導を行ったり、多職種(看護師や介護士)に車いすや褥瘡予防クッションの使い方や介助方法を指導します。

また、オーストラリアでは複数の施設を持つ法人のシニア作業療法士として、本部でリハ統括者として働く場合もあります!

就労支援

企業や公共機関において、就労支援に関わる作業療法士が担当する仕事の例としては、以下のようなものがあります。

  • 労働者のリハビリテーション支援
  • 作業環境の改善
  • 作業場所のアクセシビリティ改善
  • 労働者の健康管理

労働者のリハビリテーション支援

労働者が業務中に負傷した場合や、過剰な労働によって身体的な負担を抱えた場合などに、リハビリテーション支援を行います。例えば、手術後のリハビリテーションや、怪我の治療後の、復職支援(どんな動きならやってもよい・悪いか、障がいが残った場合の本人に適切な仕事内容のアドバイス)などがあります。

作業環境の改善

作業環境の改善によって、肩こりや腰痛などの身体的負担を軽減することができます。また、作業の内容や方法の改善によって、ストレスや精神的負担を軽減することもできます。作業療法士は作業環境を総合的に評価し、企業側に改善案の提示をします。

作業場所のアクセシビリティ改善

作業療法士は、身体的な障害を持つ人が作業場所にアクセスできるように、アクセシビリティの改善にも取り組んでいます。例えば、建物のバリアフリー化や、車いすなどの移動支援機器の提供などが挙げられます。

労働者の健康管理

作業療法士は、労働者の健康管理にも取り組んでいます。例えば、作業中の体調管理や、運動や栄養のアドバイスを行うことで、労働者の健康維持や予防につながります。

以上のように、企業や公共機関で働く作業療法士の役割は、患者のリハビリテーション支援にとどまらず、職場の安全性や作業環境の改善にも深く関わっています。就労支援に関わる作業療法士は、医療機関で働く作業療法士とは異なり、患者の治療やリハビリテーションだけでなく、予防や健康維持、作業環境の改善など、幅広い分野に関わっています。

作業療法士が働く領域は日本とほとんど同じですね。作業療法の世界基準(WFOT世界作業療法連盟)の基準に沿っているためかもしれません。

私の経験上では、日本よりも「OT」の知名度が高く、小児(発達障害)や障がい者の生活の専門家というイメージが強いようです。

作業療法士が働く領域は、対象者一人ひとりによって必要とされる介入方法が異なるため多岐に渡ります。しかし、作業療法士が働く場所は一般的に、下記の4か所のどこかです。

日本とオーストラリアの作業療法士の違いとは?

日本とオーストラリアの作業療法士の違いについていくつかの点を挙げることができます。

教育制度

まず、教育制度に違いがあります。日本では、作業療法士の養成には、大学や短期大学、専門学校などでの専門教育が必要です。一方、オーストラリアでは、作業療法士になるためには、4年制の大学での学士号を取得する必要があります。

さらに詳しく知りたいという方はこちら

オーストラリアで作業療法士資格を取得する方法【ヒント:2通りあります】

オーストラリアで作業療法士の資格を取得するまでの流れ

診療報酬制度

また、診療報酬制度にも違いがあります。日本では、作業療法士が行うリハビリテーションに対して保険が適用され、診療報酬が支払われます。一方、オーストラリアでは、公的医療保険制度(Medicare)がありますが、作業療法士が行うリハビリテーションには、保険適用外の(民間保険で賄われる)場合があります。

職場の環境

さらに、職場の環境や働き方にも違いがあります。オーストラリアでは、フルタイムとパートタイムの勤務形態が一般的ですがカジュアル(非正規雇用)や派遣会社から施設に派遣される場合もあります。一方、日本では、就労時間は基本的にフルタイムが主流です(パートやか非正規もあるにはありますが)。手取りはオーストラリアのほうが日本の倍近い場合もあります(働いてみてびっくりしました)。

オーストラリアの作業療法士の転職情報が知りたい方は→こちら

色んな国籍やバックグラウンドを持つ対象者や同僚と働ける、残業の概念がほぼない、というのもオーストラリア特有の職場環境・働き方ですね!「社会人として普通こうでしょ」という価値観がそもそも通じないので、ある意味新鮮!

まとめ

以上、オーストラリアの作業療法士の仕事について、作業療法士が働く職場や仕事内容、日本との比較をご紹介しました。少しでも参考になればうれしいです!

頑張るあなたを応援しています!