
コネなし英語力初級レベルからオーストラリアで作業療法士になった現役日豪作業療法士です。
これまでオーストラリアで作業療法士になるための方法やオーストラリアの作業療法士の働き方について経験談とともに解説してきましたが、
今回は作業療法士の年収と将来性について、他の国や日本と比較しながら情報提供したいと思います。
また、日本は高齢化や医療・介護制度の変更に伴い作業療法士の需要が変動することがありますが、海外ではどんな背景があるのか、気になりますよね。
実際調べてみると、日本語のサイトでは
作業療法士の年収の「平均値」を示していることが多く、実質的な年収(多くの人がもらっている金額)が分かりにくく、参考にならないことも。
その問題を解消するため、今回はそれぞれの国の政府が出す情報や、求人情報tarent.comの調査をもとに、
作業療法士の需要や年収の「中央値」を比較してみようと思います!

やりがいのある仕事だし、もちろん年収だけで職業を決めるわけではないけど、今後の生活やキャリアを考えるうえで年収は気になりますよね。
現状だけでなく、その背景を含めてきちんと学ぶことで、あなたのキャリアを考える参考にしていただけたら幸いです!
作業療法士の需要:世界的に高まっている
海外で作業療法士の需要が高まっている背景:人口増加と制度改革
近年、世界的には人口増加が進んでおり(日本は減少傾向ですが)、アメリカ、カナダ、オーストラリアは移民が多い国で益々人口が増加しています。
このような社会背景の下で、障がい者の数や支援のニーズも高まり、より多くの人が作業療法士のサービスを必要とするようになっているそうです。
加えて、アメリカやカナダ、オーストラリアでは、経済成長も進んでおり、政府による障害者保険制度の改良により、より多くの人が作業療法士のサービスを保険適応で受けられるようになっています。

オーストラリアでは近年構築された障がい者保険制度(National Disability Insurance Sheme)の影響で多くの人が作業療法を国の保険適応で受けられるようになった一方、特に過疎地に住む障がい者の方たちにとっては受けたくても作業療法士が地域にいない、数か月待ちという状況で、人手不足が深刻化している(需要が高まっている)現状もあります。
では次に、アメリカ、カナダ、オーストラリアそれぞれの国の作業療法士の年収と、気になる将来性について深堀していきましょう。
海外の作業療法士の年収と将来性は?

オーストラリアの作業療法士の年収と将来性
では、まずオーストラリアの作業療法士の年収から見ていきましょう。
年収
通常4年制大学の学部卒業と同時(国家試験なし)に国家資格である作業療法免許を取得できるオーストラリアの作業療法士。
2023年現在オーストラリアの作業療法士の年収の中央値は、$90,597オーストラリアドル(日本円で約802万円)。時給は46.46オーストラリアドル(約4,100円)
ちなみに、厚生労働省によると、日本の作業療法士のボーナスを含めた平均年収が426.5万円なので1.5倍以上です。
ちなみに、オーストラリアには24,000人の作業療法士がいて、58%がフルタイム(週5日)勤務をしているそうです。

私の職場や周りにも、フルタイムで働いているというオーストラリアの作業療法士はあまりいなくて、副業で個人事業や子育てをしながらパートで働いている人が多い印象です。
ガンガン働いてたくさん稼ぐより、何週間か集中して働いたあと連休を取って、海外旅行など休暇を思いっきり楽しむという人も多いです。
将来性
オーストラリア政府によると、2021年から2026年までの作業療法士の人数は7.4%増える予測。
オーストラリアのメディアでは、作業療法士の不足(特に過疎地において)が言われている一方、コロナ禍からテレヘルス(遠隔リハ)が保険適応になったことから、着々と田舎に住んでいても作業療法サービスが受けられる体制作りがやサービス提供が進んでいます。

リモートワークやハイブリッド(自宅とクリニック半々など)働き方の多様性があることや、長期休暇が取りやすいのも、人気の理由かもしれません。
日本人作業療法士で、オーストラリアで作業療法士として働きたい方はこちらが参考になるかも↓

カナダの作業療法士の年収と将来性
続いては、4年制大学に行ったのち、大学院の修士課程で作業療法学を専攻し、国家試験合格の後に作業療法免許を取得できるカナダの作業療法士についてみていきましょう。
2023年現在カナダの作業療法士の年収の中央値は79,833カナダドル(日本円で約788万円)。時給は40.94カナダドル(約4,000円)
オーストラリアと同じくらいか、少なめの年収の人が多いかもしれませんね。
将来性
カナダ政府は作業療法士の需要について、以下のようにまとめています。
This occupational group is expected to face labour shortage conditions over the period of 2022-2031 at the national level.
ーこの職業は2022年から2023年まで国全体で労働力不足に直面する見込みがある。
カナダ労働統計局(2021)
各州で見ても、主要なほとんどの州で需要が高く、カナダの作業療法士で仕事を探している人の数が求人より少ないため、作業療法士として海外から移住したい人にもチャンスが多くあると見込まれています。
作業療法士の不足の原因は、カナダもアメリカ同様、需要の高まりがあることと、早期定年退職を含めた定年退職者が多いことが挙げられています。

アメリカの作業療法士の年収と将来性
では最後に、アメリカの作業療法士について見てみましょう。
カナダと同じく、一定の学部教育を受けたのち、大学院修士課程で作業療法学科を専攻し、卒業と国家試験合格により資格が取得できます。
2023年現在アメリカの作業療法士の年収の中央値は83,389USドル(日本円で約1,112万円)。時給は40.09USドル(約5,300円)
他国と比較すると最も高く、なんと日本の平均年収の2.5倍以上。

本当に同じ職業なのだろうか…と疑ってしまう高さですね。
アメリカの物価高騰がすさまじいのかな。
他職種を含めた、アメリカ全体の年収の中央値は?
アメリカ合衆国労働統計局(Bureau of Labor Statistics)によると、
アメリカの全職種を含めた年収の中央値は、55,068USドル(約730万円)
※週1,059USドル×52週間と想定して算出
中央値と比較してもアメリカの作業療法士の給料は高いので、作業療法に関連したサービスに限らず自分のビジネスを立ち上げたり、早期リタイアするという方も多いかもしれませんね。
ではこの職種の、将来性はどうでしょうか?
アメリカの作業療法士の将来性
Employment of occupational therapists is projected to grow 14 percent from 2021 to 2031, much faster than the average for all occupations.
ー作業療法士の雇用は2021年から2031年までに14%増加する見込みがある
アメリカ合衆国労働統計局(2021年)
アメリカ合衆国労働統計局によると、2021年から2031年の10年間で米国作業療法士の雇用は14%増加、毎年約10,100程度の求人が出る見込みがあるそう。
これはアメリカの全職種の平均と比較してもかなり高い増加率といわれています。
雇用数がこれだけ増える理由は、需要の増加だけでなく、作業療法士から他の職種に転職する人や、現職作業療法士の定年退職という要因も大きいとのこと。

高い専門性が必要な職種だから、というのは分かる気もするけれど、アメリカの高い生活費に加え、学生ローンをして大学の学部から修士課程まで終える、というのはなかなか精神的にもハードな道だなぁという印象。
作業療法士と、対象者の方の育った経済・教育環境にもかなり乖離があるかもしれないですね。
まとめ
海外での作業療法士の需要は、人口増加による需要拡大や、保険制度の変更などここ数年で増加傾向にあるようです。
そして海外、特にアメリカ・カナダ・オーストラリアの作業療法士の年収は、日本の1.5倍~2.5倍近くある場合もあるようです。
今後移住や留学を考える方は、「現地の物価がどれくらいなのか」や「作業療法士になるまでにかかる費用(高い留学採算がとれるのか)」「実際の労働環境」も知っていくことで、自分に合うキャリアアップ方法が見つかるかもしれませんね!
オーストラリアの働き方について知りたいかたは→こちら
頑張るあなたを応援しています!